2025年7月24日

妊婦健診は、妊娠中の母体と赤ちゃんの健康を維持し、安全な出産につなげるために欠かせない重要な医療です。
しかし、初めて妊娠した人や健診を受けるタイミングがわからない人にとっては、妊婦健診の頻度や内容、費用について不安や疑問が生まれることも多いでしょう。
「なぜ妊婦健診があるのか」「費用やスケジュールは?」など、事前に知っておくとストレスを軽減しながら妊娠期間を過ごしやすくなります。
この記事では、妊婦健診の目的や重要性、通院のスケジュール、各時期に行われる検査の内容、費用や公的補助制度などについて紹介します。
妊娠中の人やそのご家族が、安心して健診を受けるための参考になれば幸いです。
妊婦健診の目的と重要性
妊婦健診は、妊娠中の母体と赤ちゃんの健康状態を継続的に確認する医療サービスです。
ここでは、妊婦健診がなぜ必要なのか、どのような役割を持つのかなどについて紹介します。
母体と赤ちゃんの健康を守る
妊婦健診は、母体と赤ちゃんの健康維持を目的に行われます。
定期的な診察を受けることにより、妊婦さん自身の体調変化や赤ちゃんの発育状況を詳細に把握しやすくなります。
妊娠中はホルモンバランスの変化や体への負担が増加するため、血圧や体重、尿検査など基本的な健康チェックはとても重要です。
妊婦健診を通じて栄養状態や生活習慣のアドバイスも受けられるため、日常生活で意識する点が具体的に分かります。
また、赤ちゃんの発育確認や心拍のモニタリングを行い、健やかな成長をサポートするのも妊婦健診の役割です。
健診で分かる異常の早期発見
妊婦健診では、母体や赤ちゃんに生じる異常の早期発見にも重点が置かれています。
妊娠中は母体にリスクが生じやすく、特に以下のような病気には注意が必要です。
- 妊娠高血圧症候群
- 妊娠糖尿病
- 貧血
- 感染症 など
このようなリスクは、定期的な検査によって体調や検査値の変化を細かく追うことで、万が一問題が見つかった場合でも早期の治療や専門医への紹介が受けやすくなります。
また、赤ちゃんの発育不全や先天性疾患の兆候なども、超音波検査や血液検査などで判明しやすいです。
母子手帳との関係
妊娠が確認された時点で自治体から交付される母子手帳は、妊婦健診の記録や赤ちゃんの成長、健康管理の情報を一冊にまとめて管理できる大切なアイテムです。
妊婦健診時に医師や助産師が血圧や体重、検査結果、アドバイス内容などを記入するため、妊婦さん自身や家族が妊娠経過を把握しやすくなります。
出産や育児に必要な情報や予防接種の記録、健康相談の履歴も残せるため、母子手帳は妊婦健診のサポートツールとして欠かせません。
健診結果を見返したり次回の受診計画を立てやすくなったりする一面もあり、母体と赤ちゃんの健康管理に役立つでしょう。
妊娠中の不安を解消しやすい
妊婦健診は、妊娠中の不安や疑問を解消しやすくする役割もあります。
妊娠経過や赤ちゃんの発育に不安を感じている妊婦さんは多く、健診のたびに医師や助産師と直接話せる環境は、不安の解消や安心感につながります。
日常生活や体調管理、食事や運動、妊娠中のトラブルについても相談できるため、1人で悩みを抱え込まずに済むでしょう。
また、健診で得た知識やアドバイスは、妊婦さん自身だけでなく家族にとっても支えになります。
妊婦健診の頻度とスケジュール
妊婦健診の頻度や通院スケジュールは、妊娠週数や母体と赤ちゃんの健康状態によって異なります。
ここでは、妊娠初期から後期までの妊婦健診のタイミングや通院間隔、注意点などについて紹介します。
妊娠初期の健診タイミング
妊娠初期は、8~14週が該当します。
妊娠が判明したら医療機関を受診し、最初の妊婦健診を受けましょう。
一般的には、妊娠6週から8週頃に初回の妊婦健診を受けるケースが多いです。
母子手帳の交付時期や妊娠中に必要な生活指導なども、この段階で説明されます。
妊娠初期の段階で受診を始めることで、健康リスクの早期発見や適切な妊娠管理がしやすくなります。
また、自治体によって妊娠や出産についての制度が異なるため、体調に無理がない範囲で今後に備えて調べてみることもおすすめします。
中期・後期の健診頻度の変化
妊娠中期(24週~35週)から後期(36週~出産まで)にかけては、妊婦健診の頻度や内容が段階的に変化します。
妊娠12週以降は、おおむね4週間に1回のペースで妊婦健診を受けるのが一般的です。
妊娠24週以降になると2週間に1回、妊娠36週以降は毎週の頻度が基本です。
中期は赤ちゃんの発育や母体の変化が大きくなる時期であり、血液検査や超音波検査なども増えてきます。
後期は分娩に向けて母体の状態や赤ちゃんの位置、体重などを細かく観察するため、受診頻度が高くなります。
時期ごとに必要な検査や注意点が異なるため、通院スケジュールをきちんと確認しながら妊婦健診を継続しましょう。
週数ごとの通院間隔の目安
妊婦健診の通院間隔は母子保健法で定められており、妊娠週数によって目安が決まっています。一般的には以下のペースです。
週数 | 通院間隔 |
初期から23週 | 4週間ごと |
24週から35週 | 2週間ごと |
36週以降 | 1週間ごと |
ただし、妊娠の経過や医師の判断によって間隔が調整される場合もあります。その際は医師の指示通りに通院してください。
また、急な体調変化や異常が見られた場合には、定期受診以外でもすぐに医療機関へ相談しましょう。
頻度が異なる場合の注意点
妊婦健診の頻度や通院間隔は、すべての妊婦さんが同じではありません。
持病がある場合や多胎妊娠など、より重点的な観察が必要なケースでは、医師の指示により受診頻度が増加することがあります。
逆に、順調な経過であっても自己判断で受診頻度を遅らせたり、減らしたりするのはおすすめできません。
妊婦健診の頻度やタイミングに疑問や不安がある場合は、必ず医療機関に相談し、医師のアドバイスを受けてください。
妊婦健診で行われる主な検査
妊婦健診では、時期ごとにさまざまな検査が実施されます。
ここでは、妊娠初期・中期・後期ごとに行われる主な検査と、超音波検査の特徴などについて紹介します。
初期に行う検査
妊娠初期の妊婦健診では、初期から後期まで共通する尿検査、体重測定、血圧測定、計測(腹囲など)のほか、以下の検査が行われます。
- 血液検査(1回)
- 子宮頸がん検診(1回)
- 超音波検査(2回)
自治体や妊婦さんの状態によって実施するタイミングは異なる可能性がありますが、この3つの検査そのものは、妊娠初期の期間中に行うことが厚生労働省によって推奨されています。
血液検査では以下の項目についてチェックされます。
- 血液型
- B型肝炎抗原
- C型肝炎抗体
- 貧血
- 血糖
- 梅毒血清反応
- HIV抗体
- ALT抗体
- 不規則抗体
- 風疹抗体価 など
このほか、自治体の保健師による保健指導も行われ、妊娠や出産後の生活に関する相談が可能です。
保健指導は尿検査、体重測定、血圧測定、計測と同様、後期まで共通で行われるため、不安や悩みがあればぜひ相談してみてください。
中期に行う検査
妊婦健診の中期では、初期から毎回行われる血圧測定、尿検査、体重測定に加えて、以下の検査が行われます。
- 血液検査(1回)
- 超音波検査(1回)
- B群溶血性レンサ球菌検査(1回)
血液検査は貧血や血糖のチェックが目的です。
超音波検査では胎児の発育状況、羊水量、胎盤の位置、臍帯の異常などを確認します。
このほかB群溶血性レンサ球菌検査もあり、初期とは違う検査の内容に戸惑うこともあるかもしれませんが、不安があれば医師や保健師に遠慮なく相談してください。
妊娠中期は胎児の成長と母体の変化が大きくなる時期であり、後期・出産に向けてさらに準備を進めていきます。妊婦健診を活用し、健康管理に努めましょう。
後期に行う検査
妊婦健診の後期では、初期や中期と同様に血圧測定、尿検査、体重測定を継続し、加えて以下の検査が行われます。
- 血液検査(1回)
- 超音波検査(1回)
血液検査は主に貧血の有無や健康状態を確認し、妊娠後期における母体の変化を見逃さないために重要です。
超音波検査では、胎児の大きさや発育状況、羊水量、胎盤の位置や成熟度、胎児の向きなどを中期同様に詳しく観察し、出産に向けて状態を確認します。
後期は分娩準備やリスク管理がさらに重要になる時期であり、妊婦さんと胎児双方の体調を細かく観察しながら、必要に応じて医師が適切な指導や対策を行います。
超音波検査の種類と回数
妊婦健診で行われる超音波検査は、自治体によって異なることがありますが、一般的な回数は初期から後期までを通して3~5回程度です。
経過や医師の判断によっては増減する可能性があります。
初期は経膣超音波検査による胎児心拍や子宮内妊娠の確認が主な目的です。
中期以降は経腹超音波で胎児の発育や羊水量、胎盤の位置、奇形の有無などを詳細に観察します。
複数回行うことで胎児の発育を段階的に把握でき、万が一の異常発見にもつながりやすいため、妊婦健診の検査には欠かせません。
妊婦健診の費用と公的補助制度
妊婦健診には費用がかかりますが、自治体の公的補助が利用できるため、経済的な負担を軽減しながら通院できます。
ここでは、健診費用の相場や補助制度の内容、自費負担になる検査、費用面での注意点などについて紹介します。
一般的な健診費用の相場
妊婦健診の費用は受診する医療機関や地域によって異なりますが、1回あたり約5,000円から1万円程度が目安です。
初回は検査項目が多いため、1万円を超える場合もあります。
標準的な妊婦健診は14回程度が推奨されており、全額自己負担の場合は合計で10万円を超えることも珍しくありません。
費用負担が大きくなりやすいですが、各自治体による公費補助や補助券の配布を活用することで、実際の自己負担額はかなり軽減できます。
健診の内容や検査項目によって費用が増減するため、詳細は受診予定の医療機関に確認してください。
補助券や公費負担制度の仕組み
妊婦健診の経済的負担を軽減するため、自治体ごとに補助券(受診票)や公費負担制度が設けられています。
妊婦さんに母子手帳が交付される際に、各自治体から妊婦健診の補助券や受診票が配布される仕組みです。
補助券は標準的な回数分(14回程度)が支給され、健診時に提出すると費用の一部、もしくは全額が自治体から補助されます。
補助の内容や上限額、利用できる医療機関は自治体ごとに異なるため、詳細はお住まいの自治体窓口や交付時の案内を確認してください。
なお、補助券が適用されない検査や健診もあるため、補助の範囲や注意点についても事前に把握しておきましょう。
自費になる検査と費用の目安
妊婦健診では、標準的な健診項目のほかに自費負担になる検査が発生する場合があります。
代表的なものとしては、希望による追加の超音波検査や性別判定検査のほか、以下のようなものが挙げられます。
- 初期超音波胎児スクリーニング検査
- クアトロテスト
- 羊水検査
- 中期超音波胎児スクリーニング検査 など
このような検査は公費負担や補助券の対象外となっているため、全額自己負担になり、高額になることがあります。
また、自治体の補助券でも一部の医療機関では適用できない検査や、妊婦さん本人の希望によるオプション検査も自費負担です。
費用面での注意点と相談先
妊婦健診の費用や補助制度については、自治体や医療機関ごとに異なる部分が多いため、事前に確認することが重要です。
補助券の利用には有効期限や回数制限が設けられている場合があり、対象外になる検査や追加料金が発生するケースもあります。
医療機関によっては健診ごとの自己負担額が異なるため、健診前に見積もりや内訳の説明を受けると安心です。
また、経済的な不安や不明な点がある場合は、以下のような機関で相談し、詳しい説明や支援制度の案内を受けましょう。
- 自治体の保健センター
- 福祉窓口
- 医療機関の相談窓口 など
妊婦健診は赤ちゃんと妊婦さん自身の健康を守る大切な機会です。費用面でも不安を抱え込まず、早めに相談・確認して無理のない受診計画を立てましょう。
まとめ
妊婦健診は母体と赤ちゃんの健康を守るうえで欠かせないものです。
定期的な妊婦健診を受けることで、妊娠経過や異常の早期発見、日常生活での不安解消につながります。
費用面では自治体の補助制度や補助券を活用すれば自己負担額を抑えられますが、一部自費となる検査もあるため事前確認が大切です。
各時期の健診内容や回数、公的制度の内容を理解し、無理なく通院することで安心して妊娠期間を過ごしましょう。
みなとウィメンズクリニックでは、一般的な妊婦健診のほか、自費診療で超音波胎児スクリーニング検査やクアトロテスト、羊水検査などを受診していただけます。
検査の詳細や費用などに興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。