2025年7月24日

妊婦検診では定期的に採血が行われ、母体と胎児の健康維持のために重要な役割を果たしています。
血液検査をすることにより、母体の健康状態や感染症の有無、貧血や妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などのリスクを早期に発見しやすいため、妊娠中の適切な健康管理につなげられます。
しかし、なかには「本当に必要?」「異常があったら怖い」と思う人もいるでしょう。血液検査の重要性や、異常が見つかった時の対応などが分かっていれば、前向きな気持ちで血液検査に臨めます。
この記事では、妊婦健診での血液検査の目的や意義、異常があった時の対応などについて紹介します。
妊婦健診での血液検査に疑問や不安がある人は、ぜひ参考にしてください。
妊婦検診で採血が行われる理由
妊婦検診の採血は、母体の健康状態、感染症の有無、赤ちゃんの安全確認など、妊娠期間に必要な情報を得るために行われます。
ここでは、採血による血液検査の主な検査項目について説明します。
母体の健康状態を確認する
妊婦検診で採血を実施する主な目的のひとつは、母体の健康状態を詳細に確認することです。
血液検査では貧血の有無や肝機能・腎機能、血糖値の異常などが分かるため、妊娠期間中の健康管理や病気の予防に役立ちます。
妊娠中は体調が変化しやすく、定期的な血液検査によって早期に問題を見つけ、必要な対策や治療につなげることが重要です。
例えば、妊娠中に貧血が進行すると母体の体調不良や分娩時のリスクが高まり、早期発見と栄養指導が重視されますが、採血で早期発見しやすいため、すぐに対策を始められます。
感染症の有無を調べる
妊婦検診の血液検査では、B型肝炎やC型肝炎、梅毒、HIVなどの感染症についても調べます。
感染症は母体や赤ちゃんへの影響が大きいため、早期に発見し、適切な対応が必要になります。
感染症によっては母子感染のリスクがあるため、診断とともに必要な医療的措置や予防策を早めに始めなければいけません。
赤ちゃんの健康な発育と安全な出産を目指すためには、血液検査による感染症チェックが必須ともいえます。
そのため、すべての妊婦さんが妊婦健診で採血を行い、感染症の有無を把握することになっています。
赤ちゃんの健康を守るため
妊婦検診での採血は、赤ちゃんの健康を守るためにも重要です。
血液検査によって母体の健康状態や感染症の有無、栄養バランスなどが明らかになり、赤ちゃんの成長への影響を考えやすくなります。
例えば母体が妊娠糖尿病にかかっていると、胎盤から栄養が過剰に伝わり、巨大児になったり合併症を引き起こしたりする恐れがあります。
妊娠糖尿病は血液検査(空腹時血糖値や75gOGTTなど)で診断され、早期発見により血糖コントロールや経過観察、必要に応じた治療が可能です。
赤ちゃんの健康な成長のためには、やはり欠かせない検査です。
そのほか血液検査で分かること
妊婦検診の血液検査では、貧血や感染症のほかにも多くの項目が確認されます。例えば、以下のような項目は血液検査で明らかになることです。
- 血液型
- 抗体の有無
- 肝機能
- 腎機能
- 血糖値
- 甲状腺機能 など
このような多岐にわたるデータが得られます。
血液型や抗体の有無は、万が一輸血が必要になった場合や、新生児溶血性疾患の予防につながります。
また、妊娠高血圧症候群など、妊娠期間中に発症リスクが高まる疾患も血液検査で早期発見が可能です。
検査結果に基づき、医師は必要に応じて追加検査や治療、生活指導を行います。
妊婦検診での採血の頻度
妊婦検診では、妊娠初期から後期まで、母体や赤ちゃんの健康状態を確認する目的で複数回の採血が行われます。
ここでは、各時期の健診スケジュールに合わせた採血の内容やタイミングについて紹介します。
初回健診での血液検査の内容
初回健診での血液検査は、母体の基礎的な健康状態や潜在的な疾患を早期に把握する目的で欠かせません。
主な検査項目は、血液型(ABO式・Rh式)、貧血の有無を調べる血算、肝機能や腎機能の検査、梅毒やB型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV-1などの感染症チェックです。
加えて、風疹やトキソプラズマ抗体の有無も調べられます。
血液型と不規則抗体検査によって、妊娠中や分娩時の輸血リスクや赤ちゃんへの影響が把握され、感染症検査では母体と赤ちゃん双方の健康維持に役立ちます。
妊娠の安全な経過管理を始めるためにも、初回の血液検査は重要です。
妊娠中期・後期の採血のタイミング
妊娠中期にあたる妊娠24週以降には、再び血液検査が行われ、貧血の進行や妊娠糖尿病のリスクが確認されます。
また、妊娠後期、特に36週以降にも、必要に応じて追加検査が実施される場合があります。
これは出産を控えた時期に母体や赤ちゃんの健康状態を把握し、分娩時のリスク管理や適切な対応に備えるためです。
妊娠経過中の体調変化を見逃さないため、適切なタイミングでの採血が重視されています。
健診のスケジュールに沿った採血の流れ
妊婦健診のスケジュールは、妊娠初期から後期にかけて段階的に組まれています。
妊娠23週までは4週間ごと、24~35週は2週間ごと、36週以降は毎週健診を受けることが推奨されています。
このスケジュールの中で、初回健診、中期、後期にそれぞれ1回ずつ採血が実施されるのが一般的です。
また、健診ごとに医師が必要性を判断し、母体や赤ちゃんの状態に応じて検査内容を調整することもあります。
このような流れによって、妊娠全期間を通じた健康管理が可能となり、異常の早期発見や迅速な対応に役立っています。
検査の内容が変わる時期
妊婦検診の血液検査は、妊娠時期ごとに検査内容が異なります。
初回は感染症や血液型、不規則抗体などの基本項目が中心です。
中期以降は貧血や妊娠糖尿病のリスク判定になり、必要に応じて肝機能・腎機能など追加検査が行われます。
後期には再度、貧血や血小板数の確認が重視され、分娩に備えて止血機能もチェックされる場合があります。
妊婦検診の血液検査で具体的に分かること
妊婦検診の血液検査では、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスク、感染症の有無、血液型などが分かります。
ここでは、各検査項目の目的と役割などについて紹介します。
妊娠糖尿病のリスク判定
妊娠糖尿病は妊娠中に発症する糖代謝異常で、母体や赤ちゃん双方に影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と対応が必要です。
血液検査によって空腹時血糖値や負荷試験(75gOGTT)などを確認し、妊娠糖尿病のリスクを評価します。
妊娠糖尿病を放置したまま進行させると、以下のようなリスクが発生しやすくなります。
- 赤ちゃんが巨大児になる
- 羊水過多
- 早産
- 合併症
妊娠糖尿病が見つかった場合、食事療法や運動指導などを早期から開始し、必要に応じてインスリン治療を行います。
血糖管理を徹底することでさまざまなリスクを抑えやすくなるため、妊婦健診での血液検査は欠かせないといえるでしょう。
近年は高齢出産や肥満の増加に伴い、妊娠糖尿病の発症例も増えており、妊婦検診での血糖測定が重視されています。
妊娠高血圧症候群などの予防
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が高くなり、母体や赤ちゃんに様々な悪影響を及ぼす疾患です。
血液検査では腎機能や肝機能、蛋白尿の有無などを調べ、合併症リスクを評価します。妊娠高血圧症候群が進行すると、以下のような悪影響が生じやすくなります。
- けいれん発作
- 肝臓・腎臓障害
- 胎盤機能の低下
- 早産
- 赤ちゃんの発育不全 など
定期的な血液検査や尿検査で数値の変化を確認し、異常が見つかった場合には管理入院や投薬治療、安静指導などが必要です。
感染症の発見
妊婦検診の血液検査では、前述の通り、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV、風疹、トキソプラズマなど多様な感染症が調べられます。
これらの感染症は母体だけでなく、赤ちゃんにも影響を及ぼすため、妊娠初期に必ず検査が行われます。
例えば風疹ウイルスに感染していると、赤ちゃんが先天性風疹症候群になる可能性があり、トキソプラズマ感染では流産や先天異常のリスクが高まります。
B型肝炎やC型肝炎、HIVは母子感染対策として、陽性の場合は分娩時や産後の徹底対応が必要です。
梅毒も近年増加傾向にあるため、全妊婦さんを対象に検査が推奨されるようになりました。
血液型の判定
妊婦検診の血液検査では、ABO式血液型およびRh式血液型の判定も行われます。
特にRh陰性の妊婦さんは、赤ちゃんがRh陽性の場合に新生児溶血性疾患を引き起こす恐れがあるため、妊娠初期から血液型と抗体の有無を必ず確認します。
血液型判定によって、輸血が必要な場合や万が一の緊急時にも適切な対応につなげられるため、確認は欠かせません。
また、輸血時にトラブルを招く恐れのある不規則抗体の有無も併せて調べることで、分娩時や産後の安全管理に役立ちます。
血液型に関する情報は、妊娠経過を安全に進めるうえで欠かせないものとなっています。
血液検査で異変が見つかった場合の対応
妊婦検診の血液検査で異常が見つかった際は、早期に対応することが母体と赤ちゃんの健康維持につながります。
ここでは、主な異変ごとの対応や管理方法などについて紹介します。
貧血が見つかった場合
血液検査で貧血が判明した場合は、鉄分や葉酸など栄養面の指導が行われます。
妊娠中は血液量が増加しやすく、鉄分の消費も多くなるため、食事だけで補いきれない場合は鉄剤の内服もおすすめです。
特に妊娠後期では貧血傾向が強まりやすいため、必要であれば再検査が行われる場合もあります。
貧血を放置すると、分娩時の出血リスクや産後の回復遅れ、赤ちゃんの発育不良などにつながる恐れがあるため、妊娠期間中には適切にケアをしていきましょう。
感染症が判明した場合
血液検査でB型肝炎やC型肝炎、梅毒、HIVなど感染症が見つかった場合は、感染拡大防止と母子感染予防のために速やかな対応が求められます。
妊娠中に感染症が判明した場合でも、医療機関の管理のもとで適切な処置を行うことで、母体や赤ちゃんへの影響を抑えやすくなるため、医師の指示に従いましょう。
感染症の種類ごとに対策は異なりますが、例えば、B型肝炎の場合は赤ちゃんが産まれてから12時間以内に最初のワクチンを投与し、その後、複数回の追加投与が行われるため、血液検査で判明している場合にはその準備が必要です。
また、HIV陽性の場合は適切な治療や分娩方法の選択が求められ、医療機関の専門チームと連携しながら妊娠管理が続けられます。
妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群が指摘された場合
妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群が血液検査や診察で疑われた場合は、それぞれの状態に応じた専門的な管理が始まります。
妊娠糖尿病の場合、血糖値の変動を細かく確認しながら食事指導や運動療法を取り入れ、必要に応じて薬物療法が加わります。
妊娠高血圧症候群では血圧や体重、尿蛋白の変化を定期的にチェックしますが、重症例や合併症がある場合は入院管理が検討されることも多いです。
治療内容は個々の症状や妊娠週数によって調整され、妊婦さんと医師が協力しながら安全な妊娠継続と出産を目指します。
気になる場合は出生前検査の検討も
血液検査の結果や家族歴などに不安がある場合、出生前検査を行うこともひとつの方法です。
出生前検査は自費診療になり、超音波胎児スクリーニング検査やクアトロテスト、羊水検査など、複数の検査から必要な検査の選択が可能です。
不明点や不安がある場合は、健診時に医師や助産師へ相談し、出生前検査の実施を検討してみてください。
まとめ
妊婦検診では、採血による血液検査を通じて母体と赤ちゃん双方の健康状態を細かく確認します。
定期的な検査によって、貧血や感染症、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などのリスクを早期に把握し、必要な対策や治療につなげることが可能です。
異常が見つかった際も医療機関の指導により適切な管理が行われるため、心配しすぎずに妊娠期間を過ごす環境が整えられます。
みなとウィメンズクリニックでは、妊婦健診の採血の結果に合わせ、妊婦さん1人ひとりに適切な対応を心がけています。
日本赤十字医療センターや慶應義塾大学病院をはじめ、近隣の複数の総合病院とも提携しているため、万が一の時でも迅速な対応が可能です。
また、出生前検査も複数からご選択いただけます。
32週頃までの妊婦健診における採血・血液検査や健康管理などで細やかな対応をご希望の方は、ぜひ当院へご相談ください。