子宮筋腫・卵巣のう腫(良性婦人科疾患)
子宮筋腫・卵巣のう腫(良性婦人科疾患)
30歳以降になると約30%の女性が子宮筋腫を持っているとも言われています。子宮にできる良性の腫瘍(こぶの様なもの)です。一般的に腫瘍と言われイメージするがんとは違い命にはかかわりません。筋腫は一つしかできない方もいれば沢山できることもありますが、ほとんどの子宮筋腫は経過観察で大丈夫です。一般的には閉経してしまえば悪さをすることはほとんどありません。
無症状の方も多く検診などで初めて指摘されることもありますが、一般的には月経に伴う症状で見つかる方が多くなります。以下の症状のある方は筋腫があるかもしれません。特に出血が多いなど月経に伴う症状が強い方と、なかなか妊娠しない方は一度検査を受けられた方がいいでしょう。
生理の量が多い(ナプキンが2-3時間持たない)生理の時に血の塊がでてくる。生理が長引いて終わらない(7日以上)不正出血がある。検診で貧血と言われた。下腹部に硬いものを触れる。なかなか妊娠しない。排尿の異常のある方(トイレが近い、あるいは尿が出ない)便秘の方。一度受診することをお勧めします。超音波検査を行えば当日外来ですぐにわかります。
子宮頸管に良性の腫瘍(ポリープ)ができて、それが子宮口から垂れ下がってくる病気です。2-3㎜の小さなものから、1cm程のものまで大きさは様々です。また、できる数も一個だけのものから数個できることもあります。ポリープが子宮口から膣にはみ出していることで、検診で見つかることが多いです。痛みや違和感はありませんが、ポリープの粘膜は出血しやすいので、性交渉や激しい運動のあとに出血したり、何もしないのに不正出血があることもあります。治療法としては切除が一般的ですが、小さく、症状もないポリープはそのまま経過観察する場合もあります。切除は、ポリープの根元を捻じって切るだけの簡単な処置ですので、痛みも出血も少なく、通常入院せずに行なうことも多く、妊娠中でも切除は可能です。子宮頸管ポリープは、再発を繰り返しやすい特徴があります。そのため、切除した後も、1年に1回は定期検査を行なうことをお勧めします。
子宮内膜の細胞の一部が増殖してできる良性の腫瘍です。無症状のことが多いのですが、不正出血・過多月経・不妊症等の原因になることがあります。超音波検査などを行なった時に、たまたま見つかる場合が多いです。より詳しい診断をするには子宮鏡検査が必要になります。
月経のある女性の10%程度の方は子宮内膜症があると言われています。排卵と月経が病気を悪くし、閉経するまでは病気とうまく付き合わなければなりません。卵巣にできる子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)子宮内膜症と思われていますが、腸や膀胱やお腹の中の腹膜(お腹を包んでいる袋)等、様々なところに発症します。子宮内膜が子宮の筋肉に発生するものを子宮腺筋症と呼びます。
20~40歳頃は痛みや不妊の原因になり、40歳以降になると卵巣がんに関係します。診察する医師により病気の診断は大きく影響を受けます。生理痛が気になる場合や妊娠できない場合は躊躇せずに受診をお勧めします。子宮内膜症は気づかないうちに悪くなっていく病気です。生理痛や不妊症の原因になるとされています。以下のような症状のある方は子宮内膜症があるかもしれません。
中学生、高校生の頃から生理痛がひどかった。生理痛が年々ひどくなっている。痛み止めを飲んでも生理痛が我慢できない。(薬の量が増えてきている)性交渉の時奥の方が痛い。排便の時に差し込むような痛みがある。月経時に下痢をしたり吐き気やめまいがある。妊娠ができない。以上のような症状がある場合は婦人科受診をお勧めします。
卵巣に発生する液状の内容を納めた袋状の病変で、若年(20歳代~30歳代)に多い良性腫瘍です。卵巣嚢腫には「卵巣子宮内膜症性嚢腫(チョコレート嚢胞)」、「漿液性/粘液性嚢胞腺腫」、「皮様嚢腫」などがあります。これらは水や油やゼリー状の物など様々な内容物が溜まってできています。溜まるものの種類によりいくつかの種類に分かれます
皮様のう腫
(※別名:デルモイド嚢胞)
袋の中に髪の毛や油、骨など人の成分と同じようなものが溜まってきます。比較的頻度の多い病気で珍しいものではありません。
漿液性嚢胞腺腫
袋の中に水の様なものがたまっています。袋は一つのことが多いです。
粘液性嚢胞腺腫
袋の中にゼリーの様なものがたまっています。多くの場合沢山の袋でできています。
内膜症性嚢胞
(※別名:チョコレート嚢胞)
袋の中に血液が古くなった液体がたまっています。多くは無症状ですがある程度の大きさ(5cm以上)になってくると、なんとなく張るような感じや、慢性的な下腹部痛を感じることもあります。また、卵巣嚢腫が捻れる「茎捻転」が起きると、急激な腹痛で救急受診となる場合もあります。
内膜症性嚢胞(チョコレート嚢腫)は、将来的に不妊の原因となったり、悪性化するリスクがあることが分かっており、薬物治療を行ないながら経過をきちんとみていくことが重要となります。内膜症性嚢胞以外の卵巣嚢腫や、薬物療法中でも増大傾向を認めるチョコレート嚢腫や、極めて大きい卵巣嚢腫は手術が必要となります。手術には傷が小さく、痛みが少ないため、回復が早いといったメリットのある腹腔鏡手術の割合が増えてきています。患者様の希望に合わせて、適切な病院へ紹介致します。
バルトリン腺は、腟口の下部の左右(5時方向と7時方向)に存在する生理的な粘液を分泌する臓器です。通常は小さな開口部が存在し、分泌物が排出されていますが、この開口部が炎症等により閉塞することによって、粘液が排出されず、袋状の溜まりが生じます。これがバルトリン腺嚢胞(のうほう)であり、軽度の痛みや違和感を起こします。バルトリン腺嚢胞内に細菌感染を続発し、袋の中に膿(うみ)が貯留したものを、バルトリン腺膿瘍(のうよう)と言います。バルトリン腺膿瘍は強い痛みと陰部の腫れを引き起こし、「痛くて座れない」状況となる場合が多いです。
バルトリン腺のう胞では中の液体の吸引や切開による排出といった治療を行ないます。膿瘍になっている場合には、炎症を解消するために抗生剤を内服することが必要です。ただし嚢胞もしくは膿瘍が大きい場合や再発を繰り返す場合、痛みが強い場合は、手術的治療を選択します。穿刺術(針を刺して中身を吸い出す)、切開術、開窓術、造袋術、摘出術があります。
陰毛の毛穴から毛根部分である毛包に炎症を起こしている状態です。毛穴が傷つく等して細菌が毛包に入って炎症を起こします。ムダ毛処理や細菌が繁殖しやすい月経中に発症しやすくなっています。赤い丘疹ができる、または膿包という膿がたまった丘疹ができます。痛みが起こることが多く、かゆみを起こすことは比較的少ないとされています。細菌感染によって起こっているため、抗生剤による治療を行ないます。
尿道カルンケルは主に中年以降(更年期)の女性の尿道に発生する良性腫瘍のことで、小さい内は無症状のことが多く、感染等が起こると摩擦による出血や痛みが現れることがあります。乳頭状のできもので大豆くらいの大きさになると、下着に血液が付着したり、尿道口が痛い・かゆい等の症状が現れたりします。他にも、腫瘤が排尿経路を塞いでしまうことで排尿時に違和感や出血による痛みが現れ、排尿障害、血尿、血液が多く流れているため、排尿後にトイレットペーパーで拭く等の刺激だけでも簡単に出血することもあります。また、外尿道口が腫瘤によって塞がれると細菌感染が起きやすくなるため、膀胱炎を発症することもあります。原因は、はっきりとは分かってはいませんが、長年尿意を我慢する習慣や癖がある等して炎症を繰り返してきた結果が原因の一つであると考えられており、他にも、尿道へ負荷がかかる出産の回数や便秘が原因ではないかとも考えられています。
出血や痛み等の症状がなければ特に処置は必要なく、経過観察を行ないます。小さな腫れや軽度の痛み、少量の出血等の軽い症状が見られる場合は、薬やステロイドの塗布が行なわれます。しかし、腫瘤が大きい場合や出血を繰り返すもの、排尿障害、感染等の症状がある場合は、外科的な治療も検討されます。予防としては、便秘や多産、尿意を我慢することで炎症をくり返した結果が原因と考えられているので、便秘の予防をすることや、尿意を我慢しないことが大事ではないかと言えます。
膣内は元々、常在菌(乳酸菌等)によって弱酸性に保たれており、雑菌の感染を防止しています。(自浄作用)何らかの原因でこの自浄作用が弱まると雑菌が侵入しやすくなり、膣炎がおきます。自浄作用が弱まる原因:頻繁に膣を洗浄する。タンポンの使用、Gパンやガードルの蒸れ、妊娠中、抗生物質の服用、抵抗力の低下(睡眠不足、風邪、その他体調不良)感染している病原菌を見極めて、それぞれに合った治療をおこないます。
カンジダ外陰膣炎
カンジダは健常な人の膣内や皮膚等にも存在しているものであり特殊な疾患ではありません。性交渉によって感染するというよりは、抗生剤の内服後や睡眠不足、疲労、ストレスなどを伴うときによく発症します。外陰部と膣の掻痒感や痛み、灼熱感等を伴うことがあります。酒粕状やヨーグルト状の白色の帯下が増加することが特徴です。抗真菌薬の軟膏や膣錠で治療しますが、月経時や月経前等の時期や性交渉の有無によっては内服治療を行なうこともあります。ウォシュレットや石鹸の使い過ぎに注意することも大切です。
トリコモナス膣炎(性病)
原虫による感染症です。20~50%の方は無症状ですが、泡状の悪臭の強い帯下や外陰部や膣の痛みや掻痒感を伴います。公衆浴場等での感染もありますが、性行為によっても感染し、再発を繰り返すことが少なくありません。そのため、パートナーと同時の治療及び次回月経後の再検査が重要です。治療は内服治療を行ないます。この内服治療中の飲酒は腹痛や嘔吐の原因となりますので3日間は禁酒が必要です。
細菌性膣炎
おりものの検査で、上記に述べたもの(カンジダ、トリコモナス、淋菌等)以外の病原菌が原因の膣炎を指します。カンジダ同様、膣内の自浄作用が弱まった時に発症しやすくなります。症状は軽く、抗生剤の膣錠で治療します。
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