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妊娠後期に入ると、妊婦健診で「NST検査」を受けることになります。初めて聞く検査名に戸惑う方も多いでしょう。
NST検査は、お腹の赤ちゃんが元気かどうか、出産に耐えられる力があるかを確認するための大切な検査です。
この記事では、NST検査で分かることや、検査結果のグラフの見方について、医師が詳しく解説します。
NST(ノンストレステスト)検査とは

NST(ノンストレステスト)は、妊娠後期に行われる重要な検査の一つです。「ノンストレス」とは、陣痛などのストレスがかかっていない状態を意味します。
お腹の上から分娩監視装置を装着し、赤ちゃんの心拍数とお母さんの子宮収縮を同時に記録します。痛みを伴わず、お母さんはリラックスした状態で横になっているだけで検査が完了します。
検査で測定する内容
NST検査では、主に以下の3つを測定します。
【胎児心拍数】
赤ちゃんの心臓が1分間に何回打っているかを連続的に記録します。正常な心拍数は110〜160bpm(1分間の拍動数)です。
【子宮収縮】
お腹の張り具合を測定します。妊娠後期になると子宮収縮の回数が増えてきますが、この収縮が赤ちゃんに与える影響を確認します。
【胎動】
赤ちゃんが動いたタイミングを記録します。胎動を感じたらボタンを押すことで、グラフ上に記録される仕組みです。
分娩監視装置との違い
NST検査と分娩時の監視に使う装置は、実は同じものです。違いは検査を行うタイミングにあります。
陣痛が始まる前の状態で行うのがNST検査で、「胎児心拍数モニタリング」とも呼ばれます。一方、陣痛が始まってからの分娩中に行う検査はCTG(胎児心拍数陣痛図)検査といいます。
分娩中は赤ちゃんが陣痛というストレスに耐えられているかを常に監視し、必要に応じて吸引分娩や帝王切開への切り替えを判断します。
NST検査で分かることと行う目的

NST検査を行うことで、赤ちゃんの健康状態や子宮内の環境について多くの情報が得られます。
1.赤ちゃんの元気さを確認できる
赤ちゃんが元気な状態では、心拍数に細かな「ゆらぎ」が見られます。これを基線細変動といい、赤ちゃんの自律神経が正常に機能している証拠です。
また、赤ちゃんが動いたときに心拍数が一時的に上がる反応(一過性頻脈)があれば、赤ちゃんは活発に活動していると判断できます。これは大人が運動後に心拍数が上がるのと同じ現象です。
逆に、心拍数の変動が少なかったり、一時的に心拍数が下がる(一過性徐脈)が見られる場合は、赤ちゃんが酸素不足になっていないか注意深く観察する必要があります。
2.出産に耐えられる力があるか評価できる
出産は赤ちゃんにとって大きな試練です。数時間にわたる陣痛の中で、狭い産道を通り抜けなければなりません。
NST検査では、赤ちゃんがこの出産のストレスに耐えられる予備力を持っているかを事前に評価します。もし赤ちゃんの予備力が十分でないと判断された場合は、早めに帝王切開を予定するなど、安全な出産方法を検討することができます。
3.子宮内環境の状態を把握できる
妊娠後期になると、多くの妊婦さんがお腹の張りを感じるようになります。この子宮収縮が起きたときに、赤ちゃんの心拍がどう変化するかを観察することで、胎盤の機能や臍帯(へその緒)の状態を推測できます。
子宮が収縮すると一時的に胎盤への血流が減少し、赤ちゃんへの酸素供給が少なくなります。元気な赤ちゃんであれば、この程度のストレスには十分対応できますが、胎盤機能不全や臍帯の圧迫がある場合は、心拍数に異常なパターンが現れます。
子宮内環境が悪化している兆候が見られた場合は、入院して詳しい検査を行ったり、赤ちゃんを早めに外に出してあげる判断をすることもあります。
NST検査はいつから受けるのか

NST検査を受ける時期は、妊娠経過や母体の状態によって異なります。
一般的な実施時期は妊娠34〜36週以降
妊娠経過に特に問題がない場合、多くの医療機関では妊娠34〜36週頃からNST検査を開始します。妊娠36週以降は毎週の妊婦健診のたびに実施するのが一般的です。
この時期に検査を行う理由は、赤ちゃんの自律神経が成熟し、心拍数の変化を正確に評価できるようになるためです。妊娠32週未満では、赤ちゃんの自律神経がまだ未熟なため、一般的な判断基準が当てはまらない可能性があります。
また、妊娠後期はお腹の張りが増えてくる時期でもあります。この時期に検査を行うことで、子宮収縮が赤ちゃんに与える影響を適切に評価できます。
早期実施が必要なケース
以下のような場合は、妊娠34週より前からNST検査を行うことがあります。
【母体に合併症がある場合】
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症があると、胎盤機能が低下しやすくなります。そのため、早い段階から定期的にNST検査を行い、赤ちゃんの状態を継続的に確認します。
【胎児発育不全が疑われる場合】
超音波検査で赤ちゃんの発育が遅れていると判断された場合は、子宮内環境が悪化している可能性があります。早期からNST検査を行い、赤ちゃんが十分な酸素や栄養を受け取れているかを確認します。
【羊水過少や胎盤機能不全の心配がある場合】
羊水の量が少ない場合や、胎盤の機能が低下している兆候がある場合は、赤ちゃんが苦しくなっていないか頻繁にチェックする必要があります。
【胎動が少ないと感じた場合】
いつもより胎動が少ないと感じたときは、定期健診を待たずに受診していただき、NST検査で赤ちゃんの状態を確認します。胎動の減少は、赤ちゃんからの重要なサインである可能性があります。
NST検査の方法と流れ

NST検査は痛みを伴わない検査ですが、正確な結果を得るためにいくつかの手順があります。
STEP1:検査前の準備
検査前に特別な準備は必要ありませんが、検査時間は20〜40分程度かかるため、事前にトイレを済ませておくとよいでしょう。
STEP2:装置の装着
ベッドに横になり、上半身を少し起こした姿勢(ファーラー位)をとります。完全に仰向けになると、大きくなった子宮が血管を圧迫して気分が悪くなることがあるため、背もたれで上半身を支えます。
お腹に2本のベルトを巻き、センサーを装着します。
1本目:胎児心拍計
赤ちゃんの心臓の音がよく聞こえる位置にセンサーを当てます。超音波を使って心拍を検出するため、ジェルを塗ることもあります。
2本目:子宮収縮計
お腹の張り具合を測定するセンサーです。子宮が収縮すると、お腹の硬さが変化するため、それを記録します。
ベルトはセンサーがずれないよう、やや締めた状態で固定します。きつく感じる場合は遠慮なくお伝えください。
STEP3:モニタリング開始
装置を装着したら、モニタリングを開始します。赤ちゃんの心拍音が機械から聞こえてきますので、リラックスして過ごしてください。
胎動を感じたらボタンを押していただきます(自動的に胎動を検出する装置の場合は不要です)。胎動があったときの心拍数の変化は、赤ちゃんが元気かどうかを判断する重要な情報になります。
検査中は同じ姿勢を保つことが理想的ですが、体勢がつらくなった場合は少し動いても構いません。ただし、センサーの位置がずれないよう注意が必要です。
STEP4:検査終了と後処理
赤ちゃんが起きていて、十分なデータが取れれば20分程度で検査は終了します。医療スタッフがグラフを確認し、問題がなければ装置を外します。
お腹に塗ったジェルはタオルやティッシュで拭き取ります。検査結果は医師が診察時に説明いたします。
胎児が寝ている場合の対応
赤ちゃんはお腹の中で20〜40分の周期で寝たり起きたりを繰り返しています。検査中にちょうど睡眠時間と重なってしまうと、心拍数の変化が少なく、正確な評価ができないことがあります。
そのような場合は、VAST(胎児振動音刺激試験)という方法で赤ちゃんを起こします。これはブーブーという音や振動を出す機械をお腹に当てて、赤ちゃんに刺激を与える方法です。
赤ちゃんが起きるまで待つ必要があるため、検査時間が40分以上かかることもあります。赤ちゃんの睡眠サイクルは予測できないため、時間に余裕を持って来院していただくことをおすすめします。
NSTのグラフの見方

NST検査の結果は、グラフ形式で記録されます。このグラフを理解することで、赤ちゃんの状態をより深く知ることができます。
グラフの基本構造
NSTのグラフは、横軸が時間、縦軸が測定値を示しています。横軸は1分ごとに区切られており、検査時間中の変化が連続的に記録されます。
グラフは上下2段に分かれており、上段に胎児心拍数、下段に子宮収縮圧が表示されます。使用する機器によっては、この2つの波形の間に胎動が記録されることもあります。
記録紙に印刷されるタイプと、コンピューター画面に表示されるタイプがありますが、見方の基本は同じです。
上段:胎児心拍数の読み取り方
上段のグラフには、赤ちゃんの心拍数が記録されます。縦軸は通常30bpmずつ目盛りが付いており、240bpmまで記録できるようになっています。
【正常な心拍数の範囲】
赤ちゃんの心拍数は110〜160bpmが正常範囲です。161bpm以上を頻脈、109bpm以下を徐脈といい、注意が必要です。
【基線細変動(きせんさいへんどう) 】
元気な赤ちゃんの心拍数には、細かい「ゆらぎ」が見られます。グラフ上では小刻みなギザギザとして表れ、これを基線細変動といいます。
中等度の変動(6〜25bpm)があれば、赤ちゃんの自律神経が正常に働いており、元気な状態です。逆に、この変動が少ない場合は、赤ちゃんが寝ているか、元気がない可能性があります。
【一過性頻脈(いっかせいひんみゃく)】
赤ちゃんが動いたときに、心拍数が一時的に上昇します。グラフ上では山型の突起として現れ、これを一過性頻脈といいます。
20分間の検査中に、15bpm以上の上昇が15秒以上続く一過性頻脈が2回以上あれば、赤ちゃんは元気だと判断できます。
【一過性徐脈(いっかせいじょみゃく)】
心拍数が一時的に下がることを一過性徐脈といい、グラフでは谷型として現れます。
臍帯や赤ちゃんの頭が圧迫されて、一時的に酸素が足りなくなっている可能性があります。すぐに回復する場合は体勢が変われば改善しますが、子宮収縮から遅れて始まったり、繰り返し出現する場合は注意が必要です。
下段:子宮収縮圧の読み取り方
下段のグラフには、お腹の張り(子宮収縮)が記録されます。
子宮が収縮すると圧力が高まり、グラフ上では山型の曲線として表れます。妊娠後期になると、陣痛が始まる前でも子宮収縮が増えてきます。
子宮収縮と赤ちゃんの心拍数の変化を同時に観察することで、赤ちゃんがお腹の張りに対してどう反応しているかを評価できます。
胎動マークの意味
検査中に胎動を感じてボタンを押すと、グラフ上にマークが記録されます。
胎動のタイミングと心拍数の変化を照らし合わせることで、赤ちゃんが動いたときに適切に心拍数が上昇しているかを確認できます。これは赤ちゃんの元気さを示す重要な指標です。
ただし、装置によっては胎動が自動的に記録されないものもあります。その場合でも、胎児心拍数の変化から胎動を推測することができます。
NST検査結果の判定

NST検査の結果は、医師がグラフを総合的に評価して判定します。
正常と判定される条件
以下の3つの条件がすべて満たされている場合、赤ちゃんは元気で正常な状態と判断されます。
【①基線細変動が中等度(6〜25bpm)ある】
心拍数に適度なゆらぎが見られることは、赤ちゃんの自律神経が正常に機能している証拠です。
【②一過性頻脈が20分間に2回以上ある】
胎動に伴って心拍数が上昇する反応があれば、赤ちゃんは活発に活動しています。
【③一過性徐脈がない、または問題のない徐脈のみ】
心拍数が一時的に下がっても、すぐに回復し、繰り返さなければ大きな問題はありません。
正常と判定された場合、その時点で赤ちゃんは元気であり、子宮内環境も良好です。胎内環境は急激には悪化しないため、約1週間は赤ちゃんが元気な状態が続くと考えられます。
異常が疑われる場合の対応
以下のような所見が見られた場合は、正常とは言い切れない状態です。
【基線細変動の減少】
心拍数のゆらぎが少ない場合、赤ちゃんが寝ているか、元気がない可能性があります。
【一過性頻脈がない】
20分間の検査で一過性頻脈が見られない場合、赤ちゃんの活動性が低下している可能性があります。
【繰り返す一過性徐脈】
子宮収縮に伴って心拍数が下がり、回復が遅い場合や繰り返し出現する場合は、赤ちゃんが酸素不足になっている心配があります。
このような場合、「胎児機能不全」の可能性を考え、さらに詳しい検査を行います。
胎児機能不全が疑われた場合は、多くのケースで入院して継続的に観察します。原因が特定でき、治療で改善することもありますが、子宮内にいるよりも外に出してあげたほうが安全と判断した場合は、早急に帝王切開を行います。
追加検査の種類
NST検査の結果が判定不明の場合や、異常が疑われる場合は、以下の追加検査を行うことがあります。
【VAST(胎児振動音刺激試験)】
ブーブーという音や振動で赤ちゃんを刺激し、起こして反応を見る検査です。赤ちゃんが寝ていただけであれば、起きた後に正常な心拍パターンが見られます。
【BPS(バイオフィジカルプロファイルスコア)】
超音波検査で、胎児呼吸様運動、胎動、筋緊張、羊水量を観察する検査です。赤ちゃんの状態を多角的に評価できます。
【CST(収縮刺激試験)】
薬剤を使って人工的に子宮収縮を起こし、赤ちゃんの心拍がどう変化するかを観察する検査です。ただし、陣痛が始まるリスクがあるため、実施するかどうかは慎重に判断します。
これらの検査結果を総合的に評価し、赤ちゃんにとって最も安全な出産方法を選択します。
NST検査中の不快感と対処法

NST検査は痛みを伴わない検査ですが、検査時間が長いため、体勢がつらくなることがあります。
仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつあつしょうこうぐん)とは
検査中に気分が悪くなる、めまいがする、吐き気がするといった症状が出ることがあります。これは仰臥位低血圧症候群が原因の可能性があります。
仰臥位低血圧症候群とは、仰向けの姿勢を取ったときに、大きくなった子宮が背中側にある下大静脈を圧迫し、心臓への血液の戻りが悪くなることで血圧が低下する状態です。
妊娠後期には子宮が大きくなるため、仰向けになると重力で下大静脈が圧迫されやすくなります。症状が現れるまでの時間は個人差があり、10分程度で気分が悪くなる方もいれば、問題なく検査を終えられる方もいます。
通常の妊婦健診で超音波検査を受けているときにも気持ち悪くなりやすい方は、NST検査でも同様の症状が出やすい傾向があります。
体勢を変えても大丈夫か
検査中に不快感を覚えた場合、少しだけであれば体位を変えても問題ありません。ただし、センサーの位置がずれると正確なデータが取れなくなるため、注意が必要です。
最も効果的な対処法は、左側を下にして横向きに寝る姿勢(左側臥位)を取ることです。この姿勢にすると、子宮による血管の圧迫が軽減され、症状が改善します。
また、椅子やベッドの背もたれの角度を調整することで、完全に仰向けになるのを避けることもできます。無理に同じ姿勢を我慢する必要はありません。
医療スタッフへ遠慮なくご相談ください
体調不良を感じたら、我慢せずにすぐに医療スタッフに伝えてください。医療従事者にとって、妊婦さんの体調の変化を知ることは、安全な検査を行うために非常に重要です。
「わがままと思われるかもしれない」「迷惑をかけたくない」と遠慮される方もいますが、事故を防ぐという意味でも、むしろ教えていただいたほうが助かります。
以前に仰臥位低血圧症候群の症状があった方は、検査前にその旨をお伝えください。事前に体勢を工夫するなど、対策を立てることができます。
より正確で安全な検査結果を得るためには、妊婦さんが自身の感じていることを積極的に伝え、医療スタッフと協力して検査を進めることが大切です。
NST検査の費用

NST検査は妊婦健診の一環として行われるため、健康保険の適用外となります。
検査費用は医療機関によって異なりますが、1回あたり2,000〜10,000円程度が一般的です。この費用は通常の妊婦健診の費用に追加されます。
多くの自治体では、妊婦健診の費用を助成する制度があり、妊婦健診補助券(受診票)が交付されます。NST検査についても、この補助券が使える場合がありますので、お住まいの自治体の制度をご確認ください。
ただし、切迫早産や妊娠高血圧症候群など、治療が必要な状態でNST検査を行う場合は、健康保険の適用になることがあります。この場合は自己負担額が軽減されます。
妊娠36週以降は毎週の健診でNST検査を行うことが多いため、費用が気になる方は事前に医療機関や自治体の窓口にお問い合わせいただくことをおすすめします。
まとめ
NST検査は、妊娠後期に赤ちゃんの元気さを確認する大切な検査です。痛みを伴わず、お母さんはリラックスして横になっているだけで検査が完了します。
検査では赤ちゃんの心拍数、子宮収縮、胎動を記録し、グラフから赤ちゃんの健康状態や出産に耐えられる力があるかを評価します。
みなとウィメンズクリニックでは、妊婦さんが安心して出産を迎えられるよう、丁寧な検査と説明を心がけています。NST検査について不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
