
子宮底長は母子健康手帳にも記入欄がありますが、「この検査は何のため?」「数値が気になる」と感じる方も多いでしょう。
子宮底長は、妊娠の経過を確認するための基本的な検査項目のひとつです。測定方法はシンプルですが、赤ちゃんの発育状況や羊水量をスクリーニングする重要な役割を担っています。
この記事では、子宮底長とは何か、測定の目的、妊娠週数別の平均値、長い・短い場合の注意点などを詳しく解説します。
子宮底長とは

妊婦健診では、体重測定や血圧測定、尿検査などさまざまな項目を確認しますが、その中のひとつに「子宮底長(しきゅうていちょう)」の測定があります。母子健康手帳にも記入欄がありますので、目にしたことのある方も多いでしょう。
子宮底長は、妊娠の経過を確認するための基本的な計測項目のひとつです。ここでは、子宮底長とは何か、どのように測定するのかについて解説します。
恥骨から子宮の一番上までの長さ
子宮底長とは、恥骨結合上縁(恥骨の上の部分)から子宮底(子宮の一番上の部分)までの長さを指します。おへその上を通り、おなかのカーブに沿ってメジャーで測定した数値です。
妊娠が進むにつれて子宮は大きくなり、子宮底の位置も徐々に上がっていきます。この変化を数値で記録することで、赤ちゃんの発育や子宮の成長を把握する目安となります。
妊娠15〜16週から測定を開始
子宮底長の測定は、一般的に妊娠15〜16週頃から始まります。この時期になると、腹壁の上から子宮体部に触れることができるようになり、測定が可能になるためです。
妊娠初期はまだ子宮が小さく、骨盤の中に収まっているため、おなかの外から測定することができません。妊娠4ヶ月頃からおなかのふくらみが目立ち始め、胎盤も完成する時期に測定を開始します。
測定の際は、おなかを出しやすい服装で健診にお越しいただくとスムーズです。
子宮底長の測定方法

子宮底長の測定は、診察台で仰向けになった状態で行います。両膝を伸ばしてリラックスした姿勢をとり、おなかを出していただきます。
医師または助産師が、メジャーで子宮底の最高点までの長さを測定します。この際、おなかの表面のカーブに沿ってメジャーを当てるため、直線距離ではなく曲線に沿った長さとなります。
子宮底の位置がわかりにくい場合は、一度膝を立てた姿勢で子宮底を触診し、位置を確認してから再び膝を伸ばして測定することもあります。
測定はメジャーを使った手動計測のため、測る人や測り方によって多少の誤差が生じることがあります。この点は後ほど詳しく説明します。
腹囲との違い

子宮底長と同時に測定されることが多いのが「腹囲」です。母子健康手帳にも両方の記入欄がありますが、測定する場所と目的が異なります。
腹囲は、おへその高さでおなかの周囲をメジャーで測った数値です。おなか全体の大きさを表し、子宮底長と同様に仰向けの姿勢で測定します。
子宮底長が子宮の縦の長さを測るのに対し、腹囲はおなかの横の広がりを測る指標です。
子宮底長を測定する目的

子宮底長の測定には明確な目的があります。ここでは、子宮底長を測ることで何がわかるのか、どのように活用されるのかを解説します。
なお、子宮底長はあくまでもスクリーニング検査としての位置づけであり、測定結果に気になる点があった場合は、超音波検査で詳しく確認します。両方の検査結果を総合的に判断することで、妊娠の経過をより正確に評価できます。
赤ちゃんの発育状況の目安
子宮底長は、おなかの赤ちゃんが妊娠週数に応じて順調に成長しているかを確認する目安のひとつです。
妊娠が進むと、赤ちゃんの成長に伴って子宮も大きくなり、子宮底の位置が徐々に上がっていきます。この変化を定期的に測定することで、赤ちゃんの発育が週数相応であるかを大まかに判断できます。
ただし、子宮底長だけで赤ちゃんの大きさを正確に測ることはできません。妊婦さんの体格や体型、赤ちゃんの位置によっても数値は変化するため、あくまでも目安として捉えることが大切です。
羊水量の確認
子宮底長は、羊水量の異常を早期に発見する手がかりにもなります。
羊水が多すぎる「羊水過多症」の場合、子宮が通常よりも大きく膨らむため、子宮底長が週数の目安よりも著しく長くなることがあります。反対に、羊水が少なすぎる「羊水過少症」の場合は、子宮底長が短くなる傾向があります。
羊水量の異常は赤ちゃんの健康状態に影響を及ぼすことがあるため、子宮底長の測定で気になる変化があった場合は、超音波検査でより詳しく調べます。
妊娠週数別の子宮底長の平均値

子宮底長は妊娠週数が進むにつれて徐々に長くなっていきます。ここでは、妊娠月数ごとの子宮底長の目安について解説します。
妊娠月数ごとの子宮底長の目安一覧
妊娠月数ごとの子宮底長の目安は以下の通りです。
| 妊娠月数(週数) | 子宮底長の目安 |
|---|---|
| 妊娠4ヶ月(12〜15週) | 7〜12cm |
| 妊娠5ヶ月(16〜19週) | 13〜15cm |
| 妊娠6ヶ月(20〜23週) | 18〜21cm |
| 妊娠7ヶ月(24〜27週) | 22〜24cm |
| 妊娠8ヶ月(28〜31週) | 25〜28cm |
| 妊娠9ヶ月(32〜35週) | 28〜31cm |
| 妊娠10ヶ月(36〜39週) | 32〜35cm |
これらの数値はあくまでも平均的な目安であり、妊婦さんの体格や赤ちゃんの位置、測定する人によって誤差が生じます。
数値が目安から外れていても、超音波検査で赤ちゃんの発育や羊水量に問題がなければ心配する必要はありません。
臨月の子宮底長の変化
臨月に入ると、赤ちゃんの頭が骨盤内に下降し始めます。この現象を「児頭下降」といい、出産に向けた体の準備のひとつです。
赤ちゃんが下がることで子宮底の位置も下がるため、妊娠10ヶ月末の子宮底長は30〜36cm程度となり、妊娠9ヶ月末とあまり変わらないか、場合によっては妊娠8ヶ月末と同じくらいの長さに戻ることもあります。
「臨月なのに子宮底長が短くなった」と不安に思う方もいらっしゃいますが、これは正常な変化です。気になることがある場合は、妊婦健診の際に医師や助産師にご相談ください。
子宮底長が長い・短い場合に考えられること

妊婦健診で子宮底長を測定し、「基準値より長い」「短い」と言われると不安になる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、子宮底長が基準値から外れている場合に考えられる原因と、注意すべき点について解説します。
基準値より長い場合
子宮底長が週数の目安よりも著しく長い場合、以下のような状況が考えられます。
| 考えられる状況 | 説明 |
|---|---|
| 羊水過多症 | 羊水が通常よりも多い状態です。赤ちゃんの消化器系の異常や、妊娠糖尿病などが原因となることがあります。 |
| 多胎妊娠 | 双子や三つ子などの多胎妊娠の場合、子宮が大きくなるため、子宮底長も長くなります。 |
| 巨大児 | 赤ちゃんが週数に対して大きく育っている場合です。妊娠糖尿病がある場合などに見られることがあります。 |
| 前置胎盤や逆子 | 胎盤の位置や赤ちゃんの姿勢によって、子宮底長が長くなる傾向があります。 |
基準値より短い場合
子宮底長が週数の目安よりも著しく短い場合、以下のような状況が考えられます。
| 考えられる状況 | 説明 |
|---|---|
| 羊水過少症 | 羊水が通常よりも少ない状態です。胎盤機能の低下や、赤ちゃんの腎臓や尿路の異常などが原因となることがあります。 |
| 胎児発育不全 | 赤ちゃんの成長が週数に対して遅れている状態です。胎盤の機能や母体の健康状態などが影響することがあります。 |
| 骨盤が広い体型 | 異常ではありませんが、骨盤が広い方の場合、赤ちゃんが骨盤内に収まりやすく、子宮底長が短くなることがあります。 |
子宮底長が長い場合も短い場合も、超音波検査で赤ちゃんの発育や羊水量を詳しく確認します。
子宮底長を測定しない病院もある理由

妊婦健診で子宮底長を測定する病院と、測定しない病院があります。母子健康手帳には記入欄がありますが、近年は測定を省略する医療機関が増えています。ここでは、その背景について解説します。
日本産科婦人科学会が発行する「産婦人科診療ガイドライン 産科編」では、「リスクのない単胎妊婦(妊娠しているのが1人)の定期健診で超音波検査を実施した場合、子宮底長測定は省略できる」との見解が示されています。また、腹囲測定についても「測定の有用性に関しては不明なので省略可能」とされています。
超音波検査では、赤ちゃんの頭の大きさやおなかの周囲、太ももの骨の長さなどを測定し、推定体重を算出できます。また、羊水量や胎盤の位置、赤ちゃんの姿勢なども直接確認できるため、子宮底長測定よりも詳細で正確な情報が得られます。
このような理由から、多くの医療機関では超音波検査を優先し、子宮底長測定を省略する方針に変わってきています。測定を行わなくても、母体や赤ちゃんの安全性には影響しません。
まとめ
子宮底長は、妊婦健診で測定される検査項目のひとつで、恥骨から子宮の一番上までの長さを測るものです。赤ちゃんの発育状況や羊水量を推測する目安として活用されてきました。
近年は超音波検査の普及により、子宮底長測定を省略する医療機関も増えています。子宮底長の数値だけに一喜一憂せず、さまざまな検査結果を総合的に見て、妊娠の経過を確認することが大切です。
定期的な妊婦健診を受けることで、お母さんと赤ちゃんの健康を守ることができます。測定値について不安や疑問がある場合は、遠慮なく医師や助産師にご相談ください。
