
多くの自治体では妊婦健診の費用を補助するため、14回分程度の補助券を交付していますが、妊娠の経過によっては補助券が足りなくなることがあります。
当院でも「補助券が足りなくなったらどうすればいいですか」というご相談を多くいただきます。本記事では、補助券が足りなくなる理由や対処法、自己負担額の目安、利用できる助成制度について詳しく解説します。
妊婦健診で補助券が足りなくなる主な理由

妊婦健診の補助券は、標準的な妊娠経過を想定して14回分程度が交付されます。しかし、実際の妊娠経過は個人差が大きく、さまざまな理由で補助券が足りなくなることがあります。
1.予定日超過による受診回数の増加
出産予定日を過ぎても陣痛が来ない場合、胎児の状態を確認するために健診の回数が増えます。妊娠37週以降は週1回の健診が推奨されていますが、予定日を超過すると週2回の健診が必要になることもあります。
初産婦の場合、予定日を1〜2週間超過することは珍しくありません。40週を超えて41週、42週と妊娠が継続すると、その分健診回数が増え、補助券が不足する可能性が高まります。
2.切迫早産など妊娠経過による通院頻度の増加
切迫早産や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などのリスクがある場合、通常よりも頻繁に健診を受ける必要があります。母体や胎児の状態を細かく観察するため、標準的な健診スケジュールよりも受診回数が多くなります。
また、前置胎盤や胎児発育不全などが確認された場合も、経過観察のために健診間隔が短くなることがあります。母体と赤ちゃんの安全を最優先するため、医師の判断で追加の健診をお願いすることがあります。
3.多胎妊娠で健診回数が多い場合
双子や三つ子などの多胎妊娠では、単胎妊娠よりも健診の回数が多くなります。多胎妊娠はハイリスク妊娠に分類され、早産のリスクや妊娠高血圧症候群の発症率が高いため、より慎重な経過観察が必要です。
多くの自治体では多胎妊娠の場合に補助券を追加交付していますが、それでも足りなくなることがあります。自治体によって追加枚数が異なるため、多胎妊娠が分かった時点で早めに確認することをおすすめします。
4.里帰り出産で転院した場合
里帰り出産で他県の医療機関に転院する場合、転院先の医療機関が補助券の契約医療機関でないと補助券が使えないことがあります。自治体によっては契約医療機関のリストを公開しているため、里帰り前に確認しておくことが大切です。
また、転院時に改めて初診時の検査を行う医療機関もあり、その場合は健診回数が増えて補助券が足りなくなる可能性があります。
補助券が足りない場合の対処法

補助券が足りなくなった場合でも、妊婦健診を中断してはいけません。母体と赤ちゃんの健康を守るため、適切な対処法を知っておくことが大切です。
補助券使用後は自費で受診を継続する
補助券を使い切った後も、妊婦健診は継続して受診する必要があります。健診を受けないと、母体の合併症や胎児の異常を見逃すリスクが高まります。
自己負担が発生することへの不安は理解できますが、出産まで適切な医療管理を受けることが最も重要です。費用面で不安がある場合は、遠慮なく医療機関や自治体の窓口に相談してください。自治体によっては償還払い制度や追加の助成制度が用意されています。
領収書と未使用の補助券は必ず保管する
補助券が使えなかった健診や、補助券を使い切った後の健診については、必ず領収書を保管してください。領収書は償還払い制度を利用する際に必須の書類です。
また、未使用の補助券も捨てずに保管しておきましょう。償還払いの申請時に未使用の補助券の提出を求められることがあります。領収書には健診日、金額、医療機関名が明記されていることを確認し、紛失しないよう母子手帳と一緒に保管することをおすすめします。
受診回数を減らす判断は絶対に避ける
費用を抑えるために健診の回数を減らすことは絶対に避けてください。妊婦健診は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、胎児発育不全などの早期発見に不可欠です。
健診を受けずに重大な異常を見逃した場合、母体や赤ちゃんの命に関わる事態を招く可能性があります。経済的な理由で受診をためらう場合は、医療機関や自治体の相談窓口に必ずご相談ください。分割払いや助成制度の案内など、具体的な解決策を一緒に考えることができます。
補助券を使い切った後の自己負担額

健診費用は検査内容や医療機関によって異なりますが、目安を知っておくことで経済的な準備ができます。
1回あたりの健診費用の目安
基本的な健診(問診、血圧測定、尿検査、腹囲・子宮底長測定、超音波検査など)の場合、1回あたり5,000〜10,000円程度が一般的です。
血液検査や特殊な超音波検査が含まれる場合は、15,000〜20,000円程度になることもあります。妊娠後期の健診で胎児の心拍モニタリング(NST)を行う場合は、追加で3,000〜5,000円程度の費用がかかります。
検査内容による費用の違い
妊婦健診の費用は、実施する検査項目によって変動します。通常の健診では基本的な診察と超音波検査が中心ですが、血液検査や培養検査が加わると費用が上がります。
妊娠初期に行う血液型検査や感染症検査、妊娠中期のグルコースチャレンジテスト、妊娠後期のB群溶血性レンサ球菌検査などは、それぞれ数千円の費用がかかります。これらの検査が必要な週に補助券が足りなくなると、1回の健診で2万円を超えることもあります。
償還払い制度による費用助成の活用

補助券が使えなかった健診費用について、自治体によっては償還払い制度で助成を受けられる場合があります。制度の内容は自治体によって異なるため、お住まいの自治体に確認しましょう。
償還払い制度とは
償還払い制度は、いったん自己負担で支払った健診費用を、後日自治体から払い戻してもらう制度です。補助券が使えなかった健診について、領収書などの必要書類を提出することで助成を受けられます。
ただし、すべての自治体で実施しているわけではないため、事前に確認が必要です。
償還払いの対象となるケース
里帰り出産などで、自治体と契約していない医療機関で健診を受けた場合が該当します。この場合、補助券は使えませんが、後日償還払いの申請ができます。
申請に必要な書類
償還払いの申請には、一般的に以下の書類が必要です。
- 自治体が指定する申請書、健診の領収書原本またはコピー
- 診療明細書、未使用の補助券
- 母子健康手帳のコピー(表紙と妊娠経過のページ)
- 振込先口座情報が分かるもの(通帳やキャッシュカードのコピー)
自治体によっては追加の書類が必要な場合もあるため、申請前に必ず確認してください。書類に不備があると申請が遅れたり、追加の郵送費が発生したりすることがあります。
申請期限と提出方法
償還払いの申請期限は、多くの自治体で出産日から6ヶ月〜1年以内と定められています。期限を過ぎると助成を受けられなくなるため、早めに申請することをおすすめします。
申請方法は郵送が一般的です。自治体によっては窓口での受付も可能ですが、必要書類が揃っていることを確認してから提出しましょう。申請から振込までは通常2ヶ月程度かかります。
助成対象外となるケース
以下のようなケースは、償還払い制度の対象外となります。
- 母子健康手帳交付前に受けた健診
- 補助券をすべて使い切った後の健診
- 産後健診
- 海外の医療機関で受けた健診
- 保険適用となった診療
- 妊婦健診以外の費用(文書料、両親学級の費用など)
検査のみの受診で健診費用の負担がなかった場合も、助成は受けられません。不明な点があれば、自治体の窓口に問い合わせることをおすすめします。
自治体別の補助券制度の違い

とくに引っ越しや里帰り出産を予定している場合は、事前に制度の違いを確認しておきましょう。
補助券の枚数と助成額は自治体により異なる
補助券の枚数は多くの自治体で14回分ですが、助成額は自治体によって大きく異なります。1回あたり4,000〜5,000円程度の自治体もあれば、10,000円以上の助成を行う自治体もあります。
総助成額は自治体によって8万円〜15万円程度と幅があります。お住まいの自治体の助成内容は、母子健康手帳を受け取る際に確認できます。
また、自治体のウェブサイトでも詳細が公開されていることが多いため、事前に確認しておくことをおすすめします。
里帰り出産時の補助券利用方法
里帰り出産を予定している場合、里帰り先の医療機関がお住まいの自治体と契約しているかどうかを確認する必要があります。契約医療機関であれば補助券をそのまま使用できますが、契約外の医療機関では補助券が使えません。
多くの自治体では契約医療機関のリストをウェブサイトで公開しています。里帰り前に確認し、契約外の医療機関で受診する場合は償還払いの手続きについても調べておきましょう。医療機関によっては自治体との新規契約に応じてくれることもあるため、早めに相談することをおすすめします。
転入・転出時の手続きについて
妊娠中に引っ越しをする場合、補助券の取り扱いには注意が必要です。
転出する場合、それまで使用していた補助券は使えなくなります。転出先の自治体で新しい補助券の交付を受ける必要があります。その際、未使用の補助券と母子健康手帳を持参してください。転出元の自治体で使用した回数を考慮して、残りの回数分の補助券が交付されます。
転入の場合は、転入先の自治体窓口で補助券の交付手続きを行います。住民票の異動手続きが完了してから、こども家庭支援課などの担当窓口で申請してください。
予定日超過時の追加助成制度

予定日を超過して補助券を使い切った妊婦さんへ、追加助成制度を導入している自治体もあります。事前に、お住まいの自治体が該当するか確認しておきましょう。
40週超過後の健診費用助成について
一部の自治体では、妊娠40週(予定日)を超過し、14回分の補助券をすべて使用した後の健診費用について、追加の助成を行っています。
例えば広島市では、令和6年4月より予定日超過後の健診について1回あたり上限6,180円の助成を開始しました。
対象条件と助成内容
予定日超過時の追加助成を受けるには、一般的に以下の条件を満たす必要があります。
- 受診日に当該自治体に住民登録があること
- 妊娠40週を超過した受診であること
- 交付された補助券をすべて使用済みであること
- 妊婦健診の費用を全額自己負担していること(保険外診療)
助成額は自治体によって異なりますが、1回あたり5,000〜6,000円程度が一般的です。実際に支払った健診費用と助成限度額を比較して、低い方の金額が助成されます。
申請方法と必要書類
予定日超過時の追加助成を受けるには、出産後に申請が必要です。
【申請に必要な書類】
- 自治体指定の申請書
- 領収書(原本またはコピー)
- 診療明細書
- 母子健康手帳のコピー
- 振込先口座情報が分かるもの
など
申請期限は出産後6ヶ月以内としている自治体が多いため、早めに手続きを行いましょう。
費用負担を抑えるための工夫

補助券が足りなくなりそうな場合でも、いくつかの工夫で費用負担を軽減できる可能性があります。ただし、健診の質を下げることなく、安全性を最優先にした対応が重要です。
補助券の使用順序を医師と相談する
補助券の使用順序には決まりがありません。検査項目の多い健診では助成額の高い補助券を使用し、通常の健診では助成額の低い補助券を使用するなど、医師と相談しながら効率的に使用することができます。
妊娠初期、中期、後期で実施する検査内容が異なるため、どの時期にどの補助券を使用するのが最適か、担当医に相談してみましょう。医療機関によっては、補助券の効果的な使い方についてアドバイスをしてくれることもあります。
公費負担の検査項目を確認する
一部の検査は妊婦健診とは別に公費負担の対象となる場合があります。例えば、子宮頸がん検診は多くの自治体で妊娠中に1回無料で受けられます。
また、風疹抗体検査も公費負担の対象としている自治体があります。これらの検査が妊婦健診と同時に実施される場合、補助券とは別に公費負担を受けられることがあるため、医療機関の窓口で確認してみましょう。
医療費控除の対象として記録を残す
妊婦健診の自己負担額は、確定申告で医療費控除の対象となります。1年間の医療費が一定額を超えた場合、所得税や住民税が軽減される可能性があります。
補助券使用後の健診費用だけでなく、通院のための交通費も医療費控除の対象です。領収書や交通費の記録を残しておくことで、確定申告時に還付を受けられることがあります。医療費控除は世帯全体の医療費を合算できるため、家族の医療費も含めて計算してみましょう。
補助券に関するよくある質問

妊婦健診の補助券について、よくいただくご質問にお答えします。
補助券を忘れた場合は払い戻しできますか?
補助券を忘れた場合でも、自治体によっては後日申請すれば助成を受けられることがあります。領収書や未使用の補助券を提出して償還払いができるかどうかは自治体で異なるため、必ず確認が必要です。
ただし当日窓口で補助券を後から適用してもらうことはできないのが一般的です。忘れないよう母子手帳と一緒に保管しましょう。
里帰り先で補助券が使えない場合は?
里帰り先の医療機関が自治体と契約していない場合、補助券は使用できません。その場合は全額自己負担で健診を受け、出産後に償還払いの申請を行います。
多胎妊娠の追加補助券はどこで申請すればいいですか?
申請先はお住まいの自治体のこども家庭支援課や保健センターです。追加枚数は自治体によって異なりますが、4〜5枚程度が一般的です。
申請には母子健康手帳と既に交付されている補助券綴りが必要です。
補助券が余った場合はどうすればいいですか?
余った補助券を出産後に使用することはできません。
余った補助券は返却不要とする自治体が多いですが、自治体ごとに運用が異なります。基本的にはご自身で破棄して差し支えありませんが、転出予定がある場合や償還払いを申請する場合は、念のため自治体窓口へ確認することをおすすめします。
まとめ:補助券が足りなくても安心して受診を
妊婦健診の補助券が足りなくなることは、予定日超過や妊娠経過によって誰にでも起こりうることです。補助券が足りなくなっても、母体と赤ちゃんの健康を守るため、健診は継続して受診していただくことが何より大切です。
自己負担が発生する場合でも、償還払い制度や予定日超過時の追加助成など、利用できる制度があります。費用面でのご不安があれば、遠慮なく医療機関や自治体の窓口にご相談ください。
当院では、妊婦さんお一人お一人の状況に合わせて、安心して出産を迎えられるようサポートしています。補助券や費用についてご不明な点があれば、いつでもお気軽にお声がけください。
